感情-制御できぬもの

It’s fuck yourbody.

Some people live a lifetime in a minute.

これから私と一つ、ゲームを始めてみましょう。
生きている「ふり」をするのです。実際にあなたの心臓が今動いているとか、息をしているとか、脳が実際には働いているとかは全く問題になりません。あなたが死人でも構いません。生きているふりを、これから私とがんばっておこなってみるのです。なんてことはありません。まず、息をすることから始めてみましょう。さあ大きく息を吸って…、ふう、はいてえ…。どうですか、息をすることは簡単でしょう。それでは次に次に心臓を動かしてみましょう。どく、どく。何も自ら胸に手をあてるとか、メスで胸を切り開いて心臓マッサージを始めることはありません。もう既に我々の意識とは無関係に動いてしまっているのですから。次は、その心臓から血液を体内に巡らしてみましょう。心臓というポンプを使ってがんばって隅々まで酸素を送り届け、二酸化炭素を肺までもってこなければなりません。はてさて、これももう動いてしまっているようですね。それでは次は新陳代謝をおこなってみましょうか。それとも、脳の細胞をどうにかして動かしてみましょうか。いやそれよりも、みなさんが大好きな、食べることを始めた方がいいのかもしれません。それでは何か、そうですね、プリンにしましょうか。ここにあるプリンを食べましょう。それでは脳に手を動かしてその蓋を開けるよう命令して下さい。あ、それでは駄目かもしれませんね。脳に命令するのは一体誰がするのですか?脳に命令するさらなる脳が必要で、その脳にまた命令する脳がまた、という無限後退に陥ってしまいそうです。じゃあ、まあ、とりあえずスプーンですくって、口までどうにかがんばって持ってきてみてください。ふう、私にはどうやればいいのかわかりませんが…、と思いましたら、簡単にできましたねえ。いったいぜんたいどうやってそれを成し遂げたのですか?え、ただしようと思ったらできたですって?誰がそれを行おうと思ったのですか?行おうと思ったと思ったのは誰ですか?それを行おうと思ったと思ったと思ったのは誰ですか?…。ふう、まだ食べてもいないのに、ずいぶんと疲れてしまいましたね。いや、いいかげん食べましょう。それでは口で柔らかく一度二度噛んでから喉を通して食道へ通してみましょう。それから胃に送って、消化をさせましょう。さあ、早く脳に消化するよう命令しないと消化不良になってしまいますよ。え、そんなことしなくても勝手に消化してくれるですって?それは素晴らしい。いえ、あなたがどう意識しようとも、たとえ消化したくなくとも、勝手に消化を始めてしまうのですね。いやはや、なんとも驚きの構造です。

ところで、いったいぜんたい、あなたのコントロールできる部分はあなたの体にはたしてあるのですか?手、ですか?じゃあ、手をだらりとしたまま10分間動かないで下さい。あれ、動いちゃいましたよ。目、ですか?じゃあ、私の、この目をじっとまっすぐ動かないでみつめてください。あれ、でも左右に動いてしまうようですよ。それではあなた、怒ってみて下さい。え、怒るネタがないですって?じゃあなんでもいいから感情を示して下さい。ほら、喜んだり、悲しんだりとかあるじゃないですか。いえいえ、ふりではなく、本当に心から喜んだり、悲しくなって下さい。しつこいですって?ああ、やっとあなたは怒ってくれましたね。フフ。いえ、決して馬鹿にしてるわけじゃないんですよ。まあ今度はどうにか怒らないで下さい。おやおや、怒らないのも難しいみたいですね。はい、それでは驚いて下さい。え?それもおできにならない?じゃあ、あなた、一体あなたの中のどれが一体コントロールできるのですか?

え?私ですか?そうですねえ…。私は、他の部分はどうでもいいのですが、私の心をどうにかしてコントロールしようとここ数日間とてもがんばってみたのですが、残念ながら、ことごとく失敗してしまいました。どのような感情を表そうとしたのかですって?いえいえ、私は別になにかの感情を表したいなどとは思いませんでしたよ。ただ私は、この悲しみを、どうにかして抑えたかったのです。さっきもいいましたが、結局失敗しましたけれどね。


20-Nov-98


											
カテゴリー: [-2012随筆], 【追憶】   パーマリンク

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